2016年07月06日

私のファッション参考書 【着かた、生きかた】

着かた、生きかた
地曳 いく子
宝島社
2016-05-20


似合わなくなった「過去の服の清算法」について書かれた前著、「服を買うなら、捨てなさい」が大ヒットした、スタイリストの地曳いく子さん。
その彼女が、楽に効率よく「おしゃれパワー(体力、気力、財力)」を使って「スタイル」を見つける方法について書いたのが、この本です。
自分のスタイルの見つけ方から、自分とは違う人とのつきあい方までが、実に明快に痛快に書かれた、大人のための、着かた、生きかたの指南書です。


まず、ガツンと揺さぶられたフレーズを2つ。
おしゃれとは、そもそも「ムダなもの」。
そもそも、おしゃれは嗜好品です。

ファッション指南書なのに、身も蓋もない(笑)
でも、「何を着たらいいのか分からない!きーっ!」となっているとき、このフレーズを思い出せたら、ちょっと楽になれると思ったのです。
もちろん、ムダで嗜好品だから、ないがしろにしていいのよ、という話ではありません。


1つめのフレーズは、第2章の「おしゃれな人は、力の抜きどころを知っている」という項目のところで出てきます。
これは、第1章で述べられている、「選択」と「集中」の重要性の話がここに繋がってきています。
それはどういうことなのかと言うと、
大人になって仕事を持ったり家庭を持ったりすれば、自由に使える時間は限られてきます(中略)。そんな中では特におしゃれなんて、優先順位が低くなって当たり前です。
それでもおしゃれでいたいのなら、要領よくやるしかありません。
(中略)
嫌いなものや苦手なものに構っている暇なんて、本当にないのです。
とのこと。
おしゃれが上手な人は、力の入れどころ、抜きどころを心得ていて、エネルギーを要領よく使っているのだそう。
しかし、エネルギーを要領よく使っているというのは、必ずしもストイックにムダを省くということではない、としたうえで、先ほどのフレーズが出てきます。
おしゃれとは、そもそも「ムダなもの」。
水や食べ物のように、人間が生きていくのに欠かさない必需品というわけではありません。なのに、なぜ私たちがわざわざ美しく装いたいと思うのかというと、心を満たし、人生を豊かにしたいからでしょう。
(中略)
おしゃれな人が、エネルギーのムダ使いをしていないのにちゃんとおしゃれという素敵なムダを楽しめているのは、ただ「無理」とか「やりすぎ」とか「不自然」といった、「野暮なこと」をしないようにしているからです。
野暮を避ければ、そこにはちゃんとした「おしゃれの基礎」ができます。そうして余裕が生まれたところに、ほんの少しのムダ(トレンドなど)という遊び心を入れて楽しんでください。
それこそが「粋」というものです。

要領よくすることと、ムダの使い方。
これは、ファッションだけでなく全てにおいて言えることでしょう。
生活に必要なものしかないインテリアより、花一輪でもポストカード1枚でも飾ってある方が楽しいものです。
しかし、ものが溢れすぎる中にあっては、どんな美しい花も埋もれてしまう。
かつて、「トリビアの泉」というテレビ番組は、生きるのにちっとも役に立たないムダ知識を楽しめるということで人気がありました。
生きるのに必要な知識を習得する方がもちろん重要なのですが、そのムダ知識によって、生きるのに必要な知識の習得が進んだり広がったりすることがあります。
いつも思うことなのですが、このさじ加減がとても重要で、この加減の仕方こそ、身に付けたい最大のポイントなのです。


2つめのフレーズは、第4章の「間違えたら、潔く次に行く」という項目のところで出てきます。
買い物とはすなわち「選択」であり、人生もまさに、この選択でできているようなもの。
そして「絶対正解」のゴールはない。
それなら何を基準にするかというと、自分自身の「心のコストパフォーマンス」である、としたうえで、こう続きます。
そもそも、おしゃれは嗜好品です。
私たちが、食べることもできない花を飾ったり、単にお金を出し入れするだけのお財布にこだわって大枚をはたいたりするのはなぜかというと、心が満足するからですね。
(中略)
ですからおしゃれの買い物は、一生ものだとか、お買い得だとかいうことより、自分の心のコストパフォーマンスに見合ってさえいれば、それでいいのです。

この2つのフレーズの項目はそれぞれ、「おしゃれな人が、やっていること・しないこと」「これからの着かた、生きかた」という別々の章に出てきてはいますが、フレーズの後に共通して出てくる言葉があります。

それは「心の満足」。

これを得るためのヒントとして、今の社会において、いや、本当は昔だって備えておきたかった考え方が提示されています。
それは、
自分の世界と違うものは、放っておく
ということ。
私たち大人が、これからの人生をより自分らしく、満足して生きていくためのルール。
それは、「自分とは違うな、合わないな」と思ったものは、もう放っておきましょうということ。人間関係も、ファッションも、です。
自分と違うことを放っておけないことは、自分を苦しめます。「なんでじゃなくて、そうだから」。それだけのことなのです。

また、
「人とは違う」を受け入れたところから、すべてが始まる
とも述べられており、こう続きます。
人はひとりひとり、違っているもの。
人と自分は違うのが当たり前。
「なんでみんなと違うんだろう?」「だって違うから」。それだけです。
そう。それだけ。
でもたったそれだけのことに、なぜか気づけないことが多いのです。

なお、
無理にみんなと足並みを揃える必要がないのと同じく、無理に違おうとする必要もない
と補足されています。
ファッションの話でありながら、同時に生きかたについても同じことが言える。
すなわち、
「生きる」と「着る」は、同じなのです。


少し哲学的なことが先に来てしまいましたが、もちろん、もっと具体的なファッションテクニックについても書かれています。

第2章「おしゃれな人が、やっていること・しないこと」の中では、「コンフォート・ゾーン」という考え方が紹介されています。
コンフォート・ゾーンとは、その人が、自分にとって無理や負担がなく、着ていて気分が上がるおしゃれがどこからどこまでなのかを示すゾーニングです。
その人が持つ「体力+気力」「お金」「時間」という3つの要素、そこに「好み」「場と相手」というオプションを加えて考えます。
それを踏まえたうえで、ではおしゃれ度をアップするにはどうしたらよいのか。
それは、「コンフォート・ゾーンのちょっと上」を目指すこと。
つねに「ボトムを上げる」意識は必要ですが、それと同時に、早く上へ飛び上ろうと考える前に、まず減点される要素を減らすことだとしています。
いくら素敵な服を買い足したところで、ダサい服を捨てずについ着てしまったら「ときどきおしゃれな日もあるけれど、ダサい人」。買うよりまず、クローゼットの中のダサい服を捨てれば、それだけでダサい人ではなくなり、それがさらに上へいこうとする活力にもなります。


また、第3章「スタイルの見つけかた」では、より具体的な自分のスタイルを知るための3つの手がかりについて書かれています。

1つ目は「体形とサイズ」。
体形について何らかの悩みを持つ人(持たない人の方が少ない気がしますが)には、是非この項を一読することをおすすめします。

2つ目は「テイスト」。
自分の得意なテイストのつかみ方について、
30歳を過ぎたら、「好きなものの中から似合うものを選ぶ」のではなく、「似合うものの中から好きなものを選ぶ」というのが、私はいちばん合理的だと思います。 
と書かれていたのには、その手があったか!と膝を打ちました。
ちなみに、自分のテイストと反対のものを着たくなったときの救済方法についても書かれていますのでご安心を。

3つ目は「ライフスタイル」。
これは先の「コンフォート・ゾーン」と深く関わってきます。
服とはそもそも、「着る目的と着て行く場所あってこそ」のもの。今着る服は、今の生活とリンクしたものでなければ意味がないのです。
だから、今着て行く場所がない服、ライフスタイルに沿っていないものは、いらない服。そういう服を、あなたのワードローブや購入計画から削ぎ落としていけば、今のあなたに必要なものだけが残るはずです。
ワードローブにおける「いつか着る日が来る」という幻想。
私にも覚えがあります。
決してミニマリストになりたいわけじゃなく、ワードローブの全てを一軍選手にしたい。
そう思った私が最近進めてきたことが、まさにこの、ライフスタイルに合わなくなった服を処分することでした。

そしてもうひとつ。
こうして考えていくと、おしゃれの幅はけっこう狭まってしまうかもしれませんが、むしろそれだけムダが省かれ、焦点が絞られたということ。あまりにも選択肢が広すぎるとかえって戸惑ってしまいますが、その幅の中でおしゃれをすればいいと考えると、逆に分かりやすくなるでしょう?
制限がないということが必ずしも幸せなことではない、ということの、一つの例だと思います。
「制限がある」と聞くと、マイナスのイメージを抱きがちですが、実はそれが却ってプラスに働くことは、これに限った話ではありません。
「コンフォート・ゾーン」の考え方で出てきた「体力+気力」「お金」「時間」の3要素についても、余裕があるのはいいことですが、有り余ると気が緩みやすくなるので、むしろある程度制限があるほうが、真剣に検討する分、正しい選択ができる、ということも、これと同じことです。


この本全体を通じて感じたことは、「もっと肩の力を抜いてもいいんだ」ということでした。
自分ではどうにもできなかったり、無理をしなければいけないことに力を入れるより、自分に余計なものをそぎ落としてブラッシュアップする方が先、つまり足し算より引き算が先で、まさに「服を買うなら、捨てなさい」なんですね。

地曳さんはこの本の中で一貫して、「今の自分に向き合おう」、そして「今の自分を愛しませんか?」と、語りかけています。
そして、その方法を提示してくれています。
その方法は、決して難しいものではなく、むしろ肩肘張って行うものではありません。
だから、もっとおしゃれに、もっと素敵になりたい、と気張っていた私にとっては、ストンと、肩の力が抜ける思いがしたのです。


ファッションに迷子になってしまった人はもちろん、今の生きかたに息苦しさを感じている人へお勧めの1冊です。
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2014年06月30日

私のファッション参考書 【「素敵」の法則】

スタイリストさんが出されている数多くのファッション関連の本の中で、私が一番納得できたのがこの本。
パーソナルスタイリストの政近準子さんが書かれた、『「素敵」の法則』です。


人は着るものにより、存在感まで変わって見えます。毎日必ず服を着るのですから、無難に留まらず、もっとあなたの魅力を輝かせてくれる服を着たほうが、絶対によいと思います。
序章に書かれた一文です。
そうは言ってもどうしたらよいか分からない、そんな人のためにこの本はあります。

第1章では、一見何の問題もなさそうに見える、シンプルでベーシックな装いに潜む落とし穴や、実は「定番」ではない「定番」アイテムのこと、十八番アイテムを持つことの意義など、あと一歩おしゃれにならない理由について10の項目から書かれています。
その中で、高級ブランドとの付き合い方や、流行との付き合い方については、かねてから私が思っていたことが明文化されたという感じで、私の考え方を後押ししてもらった気分でした。

また、この章の中で、高い服はよい服か、ということについて書かれた項があります。
「よい服とはなんですか」と訊ねられたら、それは「高い服」ではなく、「品質と価格のバランスがとれていて、着心地のよい服」と即答します。
(中略)
価格に対する服の価値を測り、見分けるためには、やはり試着して体感することが一番です。
この答えは非常に納得の行くものでしたが、一朝一夕にはいかないということを改めて認識させられた部分でもありました。

この本で特筆すべきは、第2章のファッションテイスト診断です。
顔立ちと体型、この2つのアプローチで診断を行い、最後にそれぞれの結果を総合して、8つのファッションテイストのうちどれが一番その人の魅力を引き出すものであるかを教えてくれます。
その8つのファッションテイストとは、次のとおりです。
ノーブル系
 ノーブルフェミニン(上品で繊細、女性らしい)
 キャリアクラシック(きちんとして知的、信頼感がある)
クール系
 マニッシュクール(都会的、格好よくてクール)
 アジアンスマート(東洋的、ミステリアスでシャープ)
キュート系
 アクティブキュート(親しみやすく元気、ガーリー)
 ニュアンスボーイ(ナチュラル、ボーイッシュ)
ワイルド系
 ワイルドシック(ワイルドでスポーティー、リッチ)
 エキゾチックセクシー(エキゾチックでセクシー、開放的)
私の場合、診断を行ってみたところ、この短い説明から予想していたのとは違う、予想外の結果となりました(それについてはこちらの記事をどうぞ→ファッションテイストはニュアンスボーイ)。
この診断の目的は、自分を客観的に知ること。
そのうえで自分のよさを生かすおしゃれをしましょうというのが趣旨です。
診断前の予想には自分の理想が多分に入っていたということに気付く、よいきっかけとなりました。

また、顏と体型のタイプが異なったり、顔立ちに2つのテイストが混じるなど、複数のテイストにまたがっている人も大勢いるわけですが、それぞれのテイストの解説だけではなく、テイストミックスタイプさんはもちろん、そうでない方がマンネリや物足りなさを解消するために、2つ以上のテイストをミックスする方法についても書かれていますので、これはとても参考になります。

第3章、第4章では、おしゃれのベストバランスの探し方や、足し算引き算の仕方、服を素敵に着こなすためのちょっとしたスタイリングのコツなど具体的なことについても触れています。

第5章では、「美しく年齢を重ねるために」として、40代からの服選びについてのアドバイスも書かれていますので、これからその年代に差し掛かろうとする私や、このブログを読んでくださっているたぶん同年代と思われる方には一つの指針になることと思います。

そして最後の「スタイルは持つ、でも凝り固まらない」という項において、さきの診断などで自分の軸となるテイストやスタイルが決まったとしても、そこに固執してしまうのではなく、さらにその先の「素敵」へとアップデートしていってほしいのだと、政近さんは書いています。

もうとにかく何を着たらいいのか、どう着たらいいのか分からない、という場合には、前著の『「似合う」の法則』と併せて読むと、まずファッションの基本をおさえたうえで自分に合う着方を知ることができるので、より効果的ではないかと思います。

素敵に見えるための、小手先でなくかつ具体的なテクニックを知りたい方にお勧めの1冊です。

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2014年03月30日

私のファッション参考書 【着るということ】

着るということ
水野 正夫
藍書房
1996-09


「私たちには、粗悪な素材の安物を買っている余裕はないの」
この本で、最も印象に残ったフレーズです。
著者の友人であるフランス人女性の言葉です。

着るということについて、小手先のテクニックではなく、もっと根本的なことについて書かれた本です。

下半身、後ろ姿、首、ウエストラインと言った体のパーツのことから、フィット、スカート丈、羽織ると言った服の体への合わせ方のこと、そしてアクセサリー、バッグ、靴などの小物類のことなど、様々な要素について水野氏の哲学が披露されています。

中でも印象に残ったのは、洋服を着る場合最も大切にすべきパーツはどこであるか、幸せの五色、流行との付き合い方、着こなしとは、の項目でした。

水野氏が思う、洋服を着る場合最も大切なパーツ、それは下半身。
下半身がちゃんと着られれば、上半身は少しくらい放っておいてもかまわない。(中略)洋服は下半身で着るもの、なのです。
下半身に身に付けるものとしては、スカート、パンツ、靴、靴下などですが、中でも、ノーマル丈のタイトスカートの選び方について並々ならぬこだわりがあり、既製品で条件に合うものを見つけることができなかったら、既製品2、3枚の金額を出してもできればオーダーを、というくらいです。
だけど、
こういう(体に合った)スカートを一枚でも持っている人は、 おそらく流行に追いかけられることもなく、自信をもって自分にふさわしい衣服設計のできる幸せな人だと思う。
とまで言われたら、この理想のタイトスカートを探してみる気にもなろうというものです。

次に、幸せの五色。
これは、黒、濃青、茶、グレー、ベージュとしています。
洋服という形態の衣服を着続けるかぎり、この五色を、それも無地の服を手放してはいけない、とのこと。
なぜなら、この五色は印象が薄いから飽きないし、他の色とも組み合わせやすいうえ、またそれぞれが仲がいいからなのだそう。
本では、それぞれの色のアウトラインについても書かれており、日本における色の歴史や、世界におけるその色の位置づけなどはなかなか興味深いところでした。

そして、流行との付き合い方。
(ワードローブにおける)流行というものの比率はどんなに多くても30%、それ以上は危険だ。
(中略)
全体を100として、いつでも着られる服を70%、流行の服を30%。
(中略)
もし、この7対3の割合でも不経済だと思う人は、その比率をどんどん少なくしていいけばいい。ただし流行をゼロにしてはいけない。
流行にどこまでのるのか、その度合いを考えあぐねている人にとっては、よい目安になるのではないでしょうか。
そして、流行というものについて、さらに一歩踏み込んで次のように書いています。
流行というものは、確かに一つの現象ではあるが、店に行ってずばり買ってくるだけのものではなく、自分でつくりだすものだ。
世情に通じるということは、世の中をよく見ていいものは取り入れ、自分なりのよさを身につけることだという。人が持っているから、人が着ているからといってそれを欲しがるのは少なくとも粋ではない。
自分でつくった流行は尊い。自分だけのものでありながら、時代にちゃんと適応するだけの要素が認められる。それこそオリジナリティというものであろう。流行に合わせて毎年買い続けることを、はるかに越えているといわねばなるまい。
是非、この域に達したいものです。

最後に、着こなしとは。
着こなしとは着こなすことである。
着こなしは着飾ることとは違う。
とのこと。
洋服を着る人にとっては、着こなすセンスを磨くことが、洋服の数を増やすことよりもだいじだ。
自分のために自分でていねいに組み合わせを考えること。鏡の前で全身を映しながら、納得のいくまで時間をかけて、答えを出していくしかないのである。
と、水野氏は書いています。
また、
いい服を持つことは自慢にはならないが、いい着こなしは自慢していい。
とも書いており、その後で
いい服を持っているだけの人を、人はコレクターと呼ぶ。
と続けているのには笑ってしまいました。
そうそう、
着こなしはあわてると失敗する。
のだそうですよ。
これには思い当たる節がありますね…。

ほかにも、質の見分け方であるとか、一着の服を三十通りに着る話、後ろ姿の話や首の話など参考にすべき箇所が満載で、即効性はないかもしれませんが、長期的に見てファッションに必要なことがたくさん書かれています。
ファッション雑誌や、ファッション業界の思惑に踊らされることに疑問を持ち始めた方にお勧めの1冊です。

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2014年01月25日

私のファッション参考書 【おしゃれの絵本】

ファッションについて書かれた本はこの世に溢れるほどあり、昨今ではスタイリストさんやファッション誌のエディターさんが本を出されることも多くなりました。

その幾数多とある本の中で、私が参考にしているものを紹介してみようと思います。




2003年に出版された、中原淳一氏のスタイル画を集めた画集です。 
スタイル画の選者はピーコさん。

中原淳一氏は、昭和初期の頃にファッションデザイナー、スタイリスト、ヘアメイク、作詞家、など様々な分野で活躍された方です。
女性のくらしを新しく美しくすることをテーマにした「それいゆ」、「それいゆ」の目指す女性になるための少女時代にふさわしい雑誌としてつくられた「ひまわり」、十代のひとの美しい心と暮らしを育てる「ジュニアそれいゆ」などの雑誌を手がけられ、そこに描かれた絵や言葉は、現代においても古びることなく心を揺さぶります。

この本には、ブラウス、花柄、水玉、ストライプ、チェック、帽子、スカーフ&ストールなどの種類別に、スタイル画が数点ずつ掲載されています。
そこに、中原氏の解説と、ピーコさんのコメントが記載されているという形式になっています。

スタイル画は昭和の初期に描かれたものですから、スタイル画そのもののファッションをそのまま今の時代に持ってくるのは難しいですが、 小物の使い方、配色、シルエットの作り方など見習えるところは沢山あると思います。

中でも、綴じ込みの「配色ハンドブック」は、それぞれの色の特徴とその色に合わせる色が中原氏の解説付きで載っており、これがとても役に立つのです。
例えば、グレーとピンクなら
「甘くて、愛らしくて、若い人でもおとなでも、色の白い人にますます美しい」
キャメルと赤なら
「キャメルにぱっと明るい赤も、美しい。コートとスカーフや、バッグなどにいい色」
といった感じです。
私はこの本をクローゼットに置いておき、色選びに迷ったときは必ず引っ張り出してきます。

ほかにも、タートルネックのセーターの着方であるとか、夏のファッションのポイントであるとか、バッグを買うときの注意点など、今でも役に立つ解説が数多く掲載されています。

その中で、巻末に掲載された「本当におしゃれな人とは」というコラムがとても興味深く心に響きましたので、紹介したいと思います。
「おしゃれな人」とはどんな人でしょう?
それは美しくありたいと思う心が、ことさらに強い人のことです。
それでは、おしゃれな人というのは、みんながみんな人の心を惹くような、美しくなれる効果を知っているのでしょうか?
いいえ、美しくありたいと言っていくらお金をかけても、チグハグなものを身につけていたのでは苦心して飾ったことばかりが目立って却っておかしいし、上手に扱ってこそ、本当に効果をあげることができるというものです。
上手におしゃれをする人は、どんなにお金がかけられなくても、それなりの中で他人の心をハッとひくような効果が見せられるかもしれません。
どんなにお金がかけられなくても、上手に美しい効果を見せられる人は、やはり天才かもしれません。しかし、天才が努力しないよりも、むしろ天才でない人が、どうしたら本当に美しくなれるかを研究する方が、却って天才を凌ぐことも多いのです。
ところで、あなたは「おしゃれ」の天才でしょうか。それとも、どうしたら素晴らしいセンスを身につけられるかと努力するタイプでしょうか。そのどちらにしても、あなたが上手におしゃれをして、人の心をたのしくさせるような人になってほしいと思います。
人の心をたのしくさせるようなおしゃれ。
それは、自分のためだけでなく、その日の予定や場面を踏まえて周囲のことを慮ることはもちろん、清潔感や身だしなみに問題がないことは大前提で、そこにプラスアルファの何かを加えることが出来るおしゃれなのかなと思います。
そのプラスアルファの部分は、天才でない限り一朝一夕で身に付くものではなく、それこそ研究が必要な部分でしょう。 
もちろん、人の心をたのしくさせると言っても、人の目を気にしすぎるあまり、自分の心や体に背いたものであっては、本末転倒なのだと思います。
そのさじ加減も含めて研究するうえで、この本は助けになってくれるでしょう。 

今の流行を知りたい人向けではなく、おしゃれの在り方を探りたい人へお勧めの1冊です。 

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