「私たちには、粗悪な素材の安物を買っている余裕はないの」この本で、最も印象に残ったフレーズです。
著者の友人であるフランス人女性の言葉です。
着るということについて、小手先のテクニックではなく、もっと根本的なことについて書かれた本です。
下半身、後ろ姿、首、ウエストラインと言った体のパーツのことから、フィット、スカート丈、羽織ると言った服の体への合わせ方のこと、そしてアクセサリー、バッグ、靴などの小物類のことなど、様々な要素について水野氏の哲学が披露されています。
中でも印象に残ったのは、洋服を着る場合最も大切にすべきパーツはどこであるか、幸せの五色、流行との付き合い方、着こなしとは、の項目でした。
水野氏が思う、洋服を着る場合最も大切なパーツ、それは下半身。
下半身がちゃんと着られれば、上半身は少しくらい放っておいてもかまわない。(中略)洋服は下半身で着るもの、なのです。下半身に身に付けるものとしては、スカート、パンツ、靴、靴下などですが、中でも、ノーマル丈のタイトスカートの選び方について並々ならぬこだわりがあり、既製品で条件に合うものを見つけることができなかったら、既製品2、3枚の金額を出してもできればオーダーを、というくらいです。
だけど、
こういう(体に合った)スカートを一枚でも持っている人は、 おそらく流行に追いかけられることもなく、自信をもって自分にふさわしい衣服設計のできる幸せな人だと思う。とまで言われたら、この理想のタイトスカートを探してみる気にもなろうというものです。
次に、幸せの五色。
これは、黒、濃青、茶、グレー、ベージュとしています。
洋服という形態の衣服を着続けるかぎり、この五色を、それも無地の服を手放してはいけない、とのこと。
なぜなら、この五色は印象が薄いから飽きないし、他の色とも組み合わせやすいうえ、またそれぞれが仲がいいからなのだそう。
本では、それぞれの色のアウトラインについても書かれており、日本における色の歴史や、世界におけるその色の位置づけなどはなかなか興味深いところでした。
そして、流行との付き合い方。
(ワードローブにおける)流行というものの比率はどんなに多くても30%、それ以上は危険だ。流行にどこまでのるのか、その度合いを考えあぐねている人にとっては、よい目安になるのではないでしょうか。
(中略)
全体を100として、いつでも着られる服を70%、流行の服を30%。
(中略)
もし、この7対3の割合でも不経済だと思う人は、その比率をどんどん少なくしていいけばいい。ただし流行をゼロにしてはいけない。
そして、流行というものについて、さらに一歩踏み込んで次のように書いています。
流行というものは、確かに一つの現象ではあるが、店に行ってずばり買ってくるだけのものではなく、自分でつくりだすものだ。
世情に通じるということは、世の中をよく見ていいものは取り入れ、自分なりのよさを身につけることだという。人が持っているから、人が着ているからといってそれを欲しがるのは少なくとも粋ではない。
自分でつくった流行は尊い。自分だけのものでありながら、時代にちゃんと適応するだけの要素が認められる。それこそオリジナリティというものであろう。流行に合わせて毎年買い続けることを、はるかに越えているといわねばなるまい。是非、この域に達したいものです。
最後に、着こなしとは。
着こなしとは着こなすことである。
着こなしは着飾ることとは違う。とのこと。
洋服を着る人にとっては、着こなすセンスを磨くことが、洋服の数を増やすことよりもだいじだ。
自分のために自分でていねいに組み合わせを考えること。鏡の前で全身を映しながら、納得のいくまで時間をかけて、答えを出していくしかないのである。と、水野氏は書いています。
また、
いい服を持つことは自慢にはならないが、いい着こなしは自慢していい。とも書いており、その後で
いい服を持っているだけの人を、人はコレクターと呼ぶ。と続けているのには笑ってしまいました。
そうそう、
着こなしはあわてると失敗する。のだそうですよ。
これには思い当たる節がありますね…。
ほかにも、質の見分け方であるとか、一着の服を三十通りに着る話、後ろ姿の話や首の話など参考にすべき箇所が満載で、即効性はないかもしれませんが、長期的に見てファッションに必要なことがたくさん書かれています。
ファッション雑誌や、ファッション業界の思惑に踊らされることに疑問を持ち始めた方にお勧めの1冊です。
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