「20代」という意味の『25ans』の妹分として創刊されたその雑誌は、販促ツールとしての意味合いが強い女性ファッション誌の中では、流行を取り入れながらも追いすぎないスタイルがとても好ましく見えました。
ちょうどファッションについて大きな迷いの中にいた20代後半の私がヴァンテーヌから受けた影響は大きく、私のその後のファッションの方向性を定める大きな指針となったことは間違いありません。
ところが、ある時を境に誌面はガラリと変わり、それを機に私は購読をやめていたのですが、2007年には遂に休刊。
手に取ることがかなわなくなってしまいました。
「本当のおしゃれとは、わかりやすいブランドのバッグで語るものではなく、その人に宿る知性や清潔感、そしてゆたかな内面を表すものーー」
こんなことを言うファッション誌は、残念なことに今は見つけることができません。
トレンドを知るために一通り眺めてはみるものの、ヴァンテーヌのように読み込みたいとは思えず、あれ以来未だファッション誌ジプシーのままです。
そんな時、ふと手にとった本の中に、元編集長の小山裕子さんのインタビューが載っていました。
「『ヴァンテーヌ』が訴えたかったのは、毎月、雑誌に掲載する服やバッグなどの商品情報ではなくて、それらの見方、選び方、自分に合った使いこなし方を上達しましょう、ということだったの。おしゃれは、知性も感性も総動員して”考えること”なんですよ、って。流行や常識やマニュアルにとらわれないで、色使いのことも素材のことも、最初から真剣に考えてみましょうよーーそして例えば、ベーシックなブラウンやグレー、ネイビーを土台としたスタイリングを丁寧に繰り返すことで、きっとおしゃれは上達できる。そう、”必ずできますよ”というメッセージだったの。」
「あえて、私たちと共通点の少ない外国人のモデルさんを起用したのも、コーディネートの展示のように見せたかったから。そのほうが、自分だったらどう着こなすかイメージしやすく、客観的に考えやすいのでは、と思ったからなの」
これを読んだ時、本当に惜しい雑誌がなくなってしまったものだと、改めて思わずにはいられませんでした。
手元に残っているヴァンテーヌの切り抜きを見ると、確かにこのメッセージは至る所に繰り返しちりばめられていて、自分で考えるという内面的アプローチの重要性を訴えていました。
「創刊は1989年の秋。その頃おしゃれのメインストリートを歩いていたのは、ボディコンに身を包んだ女性達。でも編集部では、そんなボディコンファッションに違和感を覚えている女性もいっぱいいるはず、と考えていたの。賢くて努力家で、しっかり生きている。私は、そんな素晴らしい女性達が、ボディコン女性の隣に立った時に、負けないほど素敵でいてほしかった、”おしゃれ”という手段で。実は、こんな思いがあったのよ」
これは、「ボディコン」という単語を「流行」という単語に置き換えることで、今でも十分言えることなのではないかと思います。
流行の最先端のファッションで固めるというのは、実はとてもラクなのかもしれません。
誰かが作り出したものをそっくり着ればいいのですから。
だけどそれでは消費一辺倒のファッションになってしまう。
消費されるだけの人でいいの?と問われている気がしてなりません。
「20代、30代の女性って、とても忙しい。仕事だって思い通りにいかないことはあるだろうし、年齢的な迷いもたくさんある。けれどね、みんな何があっても前を向いて生きて行かなくてはならないの。だから、彼女たちが自分で自分を”うん、なかなか素敵よ”と客観的に評価できるようになれば、いろんなことに自信が持てるし、きっと変わっていける。そして、それは”おしゃれ”で可能なんだ、と知らせたかったの」
ファッションとは生き方である、というのが私の持論です。
どういうふうに生きるかということとファッションは、切っても切り離せないものだと思います。
なりたい自分が、目指したい自分がいて、そこに辿り着くのに、おしゃれの力というものは少なからず作用するものだと思うのです。
そう思った時に、指針とできる雑誌が毎月発行されていたというのは、とても幸せなことだったのでしょう。
今はもう毎月読むことはかなわないけれど、ヴァンテーヌで教わったおしゃれの精神は廃れるものではありません。
つい流行やら雑多なものに紛れて見失いそうになる自分なりのベーシック。
年を重ねる程に重要になる着るということの意味を、ヴァンテーヌを思い出してもう一度じっくり考えてみたいと思いました。
引用文出典:大草直子著 大草直子の”考えるおしゃれ”
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ヴァンテーヌに学ぶ「買っても買っても着る服がない」状態から脱出する方法
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私もヴァンテーヌが大好きでバックナンバーを保管していなかったから、今からでも手に入らないかと思って色々検索していたら、こちらに参りました。
小山さんが編集長だった時代は、小学生とか中学生で、読み始めたのが大学生のとき。
そして、すぐに親会社が変わって編集方針が変わってしまった感じなのですが、
30歳をすぎて、今めちゃくちゃあの雑誌が読みたいです。
ヴァンテーヌが掲げていた「本物を養う眼」というのに今一度触れてみたいと思うのです。
で、ヴァンテーヌのことばかり考えていたら
自分自身でも、そういう事が何かできないかと思い、以前から好きだったベネチアンビーズでアクセサリーの製作・販売をすることにしました。
その名も、Dear Vingtaine
英語にフランス語の店名で、売ってる物がイタリア製というのは節操がないなと思いつつ
雑誌「ヴァンテーヌ」が動機なんだから仕方がないと割り切ってやっております。
もしよかったら、覗いてみてください。